パソコン要約筆記利用者意識調査2024

全国文字通訳研究会では2024年6月~7月、聴覚に障害がある方を対象にパソコン要約筆記(文字通訳)について意識調査を実施しましたので、その報告書を掲載します。

全国文字通訳研究会(略称:文字通研)は発足以来、「聴覚障害者の『話のすべてを知る権利』を守るために」を掲げてパソコンによる情報保障に関する活動をしてきました。

パソコン入力による通訳は、入力速度が速いことや通信機能など拡張性に富んでいることが特徴です。話されていることをそのまま知りたい、そして健聴者と同じように参加したいという障害当事者から期待が寄せられています。しかし、多くの地域の派遣事業では短く要約する入力方法のみしか認められていないのが現状です。

2016年に当会で実施した調査では、この大幅な要約に対して大きな不満があることが明らかになりました。そして情報保障を巡る環境が変化しつつある2024年夏、これらの問題がどのくらい解決しているかを明らかにし同様の調査を行いました。しかし、結果として残念ながら8年前とあまり変わらない現状が明らかになりました。

2022年5月に施行された「情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」では、その基本理念(第3条)に「可能な限り、障害者でない者と同一内容の情報を同一時点において取得できるようにする」と書かれています。

また、調査に当たっては音声認識についての設問を新たに設けました。利用者が増えている一方、満足度はまだまだであることが明らかになりました。

全国の聴覚障害団体に協力を仰いだほか、関係団体やSNSなども通して情報拡散のお願いをしました。ご協力くださった諸団体の皆さま、回答を寄せてくださった皆さまには感謝申し上げます。

このレポートが情報保障に関する問題解決の一助になれば幸いです。

調査結果の要約

調査概要

【調査期間】        2024年年6月14日~7月13日
【調査対象】        聴覚に障害がある人
【調査方法】        インターネット調査
【有効回答数】      144人(うちパソコン要約筆記の利用経験あり128人)

Ⅰ.要約について

  • パソコン要約筆記の利用経験がある128人のうち、「いつでも全文に近いものが欲しい」と回答した人は56%。「ケースバイケース」を合わせて92%の人が全文に近いパソコン要約筆記を求めていることがわかった。これは2016年の調査とほぼ同じ傾向である。
  • 場面によって求める要約が異なる。全文に近いものを求める場面で最も多いのは「参加者の過半が聴覚障害者の会議」で回答者の半数。「短くまとめたものが欲しい」場面で最も多かったのは「講演会・演説会」だった。
  • パソコン要約筆記を利用したときに困ること・不満なことで最も多かったのは「表示が遅れる」。次いで過度な要約によって「理解できない」という意見が続いた。
  • 不満に思うことはそのまま不利益につながっている。「発言の機会を逸してしまった」人は約6割、「話の内容がよくわからなかった」人は約半数
  • 要約の程度について派遣元などに要求をしたことがある人は3割以下。しかし、要求した人の4人に3人は要求どおりのパソコン要約筆記を受けることができていた。
  • 派遣元に要求ができることを知らない人が大多数だった。
どの程度要約したものが欲しいですか
困ること・不満に思うこと

Ⅱ.音声認識について

  • 音声認識アプリを使用している人は全体144人のうち72%。複数のアプリを使っている人も多くいた。
  • 主催者が音声認識による情報保障を行うことも増えており、その経験がある人は半数を超えている。
  • 音声認識を使った情報保障の満足度は「満足」「やや満足」を合わせて44%。不満を持っている人の方が多い結果となった。
音声認識アプリを使っていますか
音声認識の満足度

詳細レポートはこちら:

パソコン要約筆記利用者意識調査報告書(PDFが開きます)
※2025年1月13日、数表p.22を修正しました。