電話リレーサービスの概要と展望 (一財)日本財団電話リレーサービス 石井靖乃 講師紹介 民間会社勤務の後、日本財団において25年間、国内外において障害者の情報コミュニケーション・アクセシビリティや手話に関する事業に取り組む。2020年8月より(一財)日本財団電話リレーサービスの専務理事。2021年7月より法律に基づく交付金による電話リレーサービス提供業務を担っている。 2ページ目 電話リレーサービスとは(図解) 3ページ目 電話リレーサービス紹介動画 4ページ目 電話リレーサービスのしくみ(図解) 文字の場合の画面イメージ 手話の場合の画面イメージ きこえる人ときこえない人を通訳オペレーターが仲介する図 5ページ目 日本財団電話リレーサービス・モデルプロジェクト 東日本大震災被災聴覚障害者支援 (第1フェーズ) 実施期間:2011年9月〜2013年8月 岩手県、宮城県、福島県、その他の県の被災聴覚障害者 登録人数:302人 利用実績:5,732回(2年間合計) 6ページ目 制度化へ向けて 2015年 6月 高市総務大臣へ国による取り組みを要請 2017年 2月 塩崎厚生労働大臣へ国による取り組みを要請 4月 参議院総務委員会で取り上げられる 6月 三河湾沖でのボート転覆事故 6月 参議院厚生労働委員会で取り上げられる 8月 野田総務大臣へ国による取り組みを要請 11月 参議院予算委員会で取り上げられる 2018年 3月 岩手山での滑落事故 10月 奥穂高岳での遭難事故 7ページ目 制度化へ向けて 2018年11月 消防庁へ手話による緊急通報の整備を要請 11月 参議院予算委員会で、進まない電話リレーサービスの整備が問われ、安倍総理大臣が「電話リレーサービスは公共インフラであり総務省に担当させる」と答弁 2019年 1月 総務省・厚生労働省共催のワーキンググループ発足 2020年 6月 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律制定 2021年 7月 公共インフラとして電話リレーサービスの提供開始 8ページ目 制度化によって変わったこと モデルプロジェクトの電話リレーサービス(図解) 日本財団→電話リレーサービスの提供 ・助成金で運営=期限付きの提供(いつか終了がくる) ・サービス提供内容も限定 法律に基づいた電話リレーサービス(図解) 電話提供事業者→電話リレーサービス支援機関(電気通信事業者協会)→電話リレーサービスの提供 ・交付金で運営=無期限に提供 ・公的サービスとして提供内容も充実 9ページ目 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律に基づく交付金制度により実施 (電話提供事業者から電話リレーサービスの提供事業の実施までのチャート図) 10ページ目 令和4年度の交付金額について 平成4年度の番号単価は、総務省告示第371号に基づき算定した結果、1番号あたり月約0.50円となったため、告示第3条ただし書きにより端数処理を行い、年間6円(約5.99円)となりました。 番号単価の適用に当たっては電話リレーサービス提供業務の資金調達等に配慮し、次のとおり4月から9月までは月1円、その他の月は0円としました。 (数表) 11ページ目 電話リレーサービスの特長 24時間365日、いつでも利用できる 1カ月間の通訳件数 約30,000通話 緊急通報ができる 1カ月間の緊急通報 約40件双方向で発受信ができる きこえない人等の利用登録者 約10,200人 12ページ目 利用料金 通話料は、電話をかけた人が負担 【聴覚障害者等利用者が発信する場合】 ・月額料ありプラン ※通話料はいずれも1分あたり 月額料1番号あたり 178.2円(税抜 162 円) 固定電話着 5.5円(税抜 5 円) 携帯電話着 33円(税抜 30 円) 緊急通報、フリーダイヤル 無料 ・月額料なしプラン ※通話料はいずれも1分あたり 固定電話着 16.5円(税抜 15 円) 携帯電話着 44円(税抜 40 円) 緊急通報、フリーダイヤル 無料 13ページ 通訳オペレータの要件について 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する基本的な方針(令和二年総務省告示第三百七十号) 【手話通訳オペレータ】 直雇用については有資格者に限る ・手話通訳技能認定試験合格者 ・手話通訳者全国統一試験合格者 ・上記と同等の資格または同等の技能を有する者 【文字通訳オペレータ】 下記いずれかに該当し、かつオペレータとして必要な速度で文字入力できること ・全国統一要約筆記者認定試験合格者 ・上記と同等の資格又は同等の技能を有すること 14ページ 通訳オペレータの運営体制 日本財団電話リレーサービス直接雇用のオペレータと業務委託にてサービス提供実施 緊急通報は直接雇用オペレータにて対応 通訳オペレータ就業規則、ガイドラインの策定 研修(現任研修含む)実施、緊急通報は別途研修実施 15ページ 通訳オペレータガイドラインの内容 オペレータの役割 正確性 守秘義務 態度、振る舞い 知識、スキルの維持・向上 公平、利益相反 通信の秘密、個人情報の取り扱い 情報セキュリティ など 16ページ 様々な課題 ■電話リレーサービスがまだまだ知られていないこと ・うちは間に合ってますんで・・・(ガチャン) ・どこの誰ですか? ・おたくが支援している聴覚障害者のかたで・・・ ・電話リレーサービスからの電話は今後一切受けたくない! すべての人に電話リレーサービスを知ってもらうことの重要性 17ページ 様々な課題 ■通訳の役割についての理解が十分でないこと ・聞こえる人から「話している相手=通訳者」と思われる。 ・代わりに調整し用件を済ませてくれる人、支援者と思われがち。 ・予約の間違いなどを通訳者の責任にされ、賠償を求められることも。 通話の主体はあくまで聴覚障害者等と通話の相手先 18ページ 様々な課題 ■金融、保険、通信、不動産などにおける本人確認の壁 ・本人もしくは家族以外からでは受け付け不可 ・本当に電話リレーサービスのオペレータ? 本人確認が求められる業界へのはたらきかけも必要 でもそもそも・・・ 本人確認のあり方、通訳を介しての電話への対応の見直しも必要では 19ページ 様々な課題 ■通話マナ―や使い方 ・電話の相手先が不在のときは時間をおいてからかけ直しを ・忙しい時間帯は相手先にせかされることも ・相手先に保留された場合の対応 ・通訳オペレータへのストーカー行為、わいせつ行為、暴言等 聴覚障害者等向け学習会の実施やQ&Aなどの作成 20ページ 文字通訳固有の課題 ■タイムラグが生じる ・入力速度の問題 ・入力が終わるまで相手に伝えない ■雰囲気を伝えることが難しい ・声の雰囲気をどう伝えるか ・顔の表情が見えない ■100%文字化するか、書かれているままに読むか 利用者、通訳オペレータともに「技術」「使い方」の向上 21ページ 今後の展望 字幕付き電話 CTS(Captioned Telephone Service) 声で話して、読む電話 (図解) ※利用者は自分の言葉は声で話して、相手の言葉は文字を読む 22ページ 参考情報:北米の需要予測 (右肩上がりの層グラフ)